不動産・相続

今注目を集める家族信託とは

超高齢化社会のリスクに備え、柔軟な資産管理と
相続を可能にする「家族信託」が注目されています

株式会社オフィスミツヒロ 代表取締役・税理士 光 昌史さん


「はじめての相続物語」
相続大増税時代を賢く乗り切るためのポイントがまとめられている

●家族信託が注目される理由

 相続税が改正された平成27年以降、相続の申告数は増加傾向にあります。基礎控除額の減額に伴い申告すべき対象者が増えたこともあり、相続税対策についても興味や関心を持たれる方が年々増えています。

 また、わが国は世界に誇る長寿国ですが、それゆえに抱える問題も少なくありません。その一つが認知症です。厚労省の発表によると2012年時点の認知症高齢者数は280万人、2025年には470万人に達する見込みです。相続する側、される側双方で、この認知症が障害となる場合も少なくなく、その病気リスクに備えたいという要望も増えています。

 その社会状況の中、注目されつつあるのが「家族信託」です。平成19年に施行され、まだまだ広くは知られていないのですが、高齢者の財産管理や遺産相続をスムーズにする制度です。

 その仕組みは、資産を持たれた方が、不動産や預貯金等の資産を信頼できる家族に託し、その管理・処分を任せるものです。
 これまで成年後見人制度を利用することが多かったのですが、その場合、裁判所の管理下に置かれ、後見人は裁判所が選出、手続きなども複雑で相続税対策もできません。後見人は親族の方でもいいのですが、それを監督するのは裁判所となり自由がききません。 家族信託の場合、裁判所からの制限はありません。もちろん第三者の方に監督人を依頼することもできますが、基本的には親族の中のどなたかがされる形です。管理を家族や親族に託すため、高額な報酬も不要で誰にでも気軽に利用できる仕組みと言えます。

●具体的な利用ケースを教えてください。

 例えば、複数の不動産物件を持たれている方が認知症になってしまうと、修繕業務等ができなくなったり、借入れの返済等が滞ってしまうかもしれません。それを避ける為に、息子さんを受託者として財産を信託し、運用してもらうことができます。収益はご自身に入りますが、管理料を委託することで、賃貸物件等の劣化を防ぎ、入居者の募集や手続き等がスムーズに行えます。金融機関では最近、本人確認が厳しく、通帳からお金を引き出す際、きちんと本人確認ができなければお金を引き出すことができません。家族信託は、こういったことも含め様々な問題をカバーできるものです。

 またこんなケースもあります。
 父親が亡くなってしまい、母親も認知症を患っていた場合、相続手続きはなかなか進みません。後見人を選任し遺産分割の話し合いに入りますが、その場合、法定相続の割合で分割協議をしていくことになります。しかし、将来的な二次相続のことを考えると、父親の財産が子ども達に先に渡った方が節税効果は高くなりますし、母親の介護面でも多くの問題を解決できます。そこで「この財産は将来的には息子に渡す予定だ」とし、財産を信託した上で遺言を作っておくと、スムーズに相続が行えます。家族信託では、次の受益者を誰にするかを決めることができるのもメリットの一つです。

●信託の手続きというのは難しいのでしょうか?

 基本的には公証人役場へ行って契約を結ぶなど手続きが必要です。そこは専門的知識を持つプロに相談してお任せくださればと思います。

●相続に関する相談は、どこに依頼すればよいのでしょうか?

 相談先を探すポイントは、やはり取り扱い件数が多いことではないでしょうか。広島県の場合、一人の税理士が扱う相続申告件数は1年でも平均1~2件と聞いています。当オフィスでは年間50件以上の申告実績があり、その経験を生かした様々なアドバイスをさせて頂いています。
 金融機関の手続きや不動産の登記関係、諸々の名義変更など、様々なフォローをさせていただいています。相続に関しては、財産の多寡にかかわらず、関心度の低さや知識不足から争いごとに発展するケースも少なくありません。小さなお悩み事からでも気軽にご相談ください。