最近ではほとんどの方が病院でお亡くなりになられます。医師から危篤状態を告げられたら、家族・親族に連絡します。連絡する対象は親子・兄弟姉妹・孫など2親等程度が一般的です。また特に親交の深かった友人などに連絡する場合もあります。緊急時ですので早朝や深夜に連絡してもかまいませんが、遠方ですぐ駆けつけられない相手などは、連絡しない配慮も必要です。
医師から臨終を告げられたら、末期の水と呼ばれる儀式を行うのが一般的です。これは仏様が亡くなる間際に水を求められたという言い伝えが由来といわれていますが今では宗教にこだわらず広く行われているようです。新しい筆か箸の先に脱脂綿を巻いたものを湿らせ、死者の唇を濡らします。死者の再生を祈るという意味合いもあり、死者の安らかな旅立ちを願う儀式として行われています。
通夜・葬儀の段取りを始めるにあたってまず始めに喪主を決定します。喪主は遺族を代表して通夜・葬儀、法要に渡り取り仕切り、弔問を受けることになります。配偶者が亡くなった場合は残された配偶者が、配偶者がいない場合は長男や残された子供が喪主を務めるのが一般的です。喪主は、通夜・葬儀のみでなくその後の年回忌法要も取り仕切ることになりますので、その点も考慮して決定する必要があります。
通夜・葬儀の日程は、僧侶など通夜・葬儀など儀式を司る方の都合、会葬者の都合、会場の都合、火葬場の都合などを考慮して決定します。また六曜で友引にあたる日は「友を引く」といわれ避ける風習があります。但し浄土真宗では俗説の類いはタブーとされているため六曜にはこだわりません。
葬儀を行う場所は、葬儀社が運営している葬儀式場、自宅、寺院、町内の集会所などが考えられます。近年では住宅事情の変化などにより、葬儀社の葬儀式場で葬儀を執り行うケースが増えています。最近では病院でお亡くなりになる場合が多いので、病院から葬儀社に連絡して、ご遺体を会場となる場所まで搬送してもらうのが一般的です。
喪主、葬儀の日時、会場が決まったら勤務先・友人・ご近所などに、電話やFAXなどで通夜・葬儀の日時・会場をお知らせします。また故人が社会的な地位や役職にあった場合は新聞に死亡広告を掲載する場合もあります。その場合は葬儀社から手配してもらうか、直接広告代理店に依頼します。その後、葬儀社のスタッフや世話役などの方と一緒に祭壇や棺、供花・供物の決定、遺影の手配、受付係や進行係、会計係の確認、通夜ぶるまいや会葬礼状の手配など様々な段取りを執り行ないます。
通夜・葬儀を行うまでにご遺体を安置する場所を決め搬送します。安置する前には死化粧を施します。死化粧には親しかった人との最後のお別れをきれいな顔でして欲しいというご遺族の想いが込められています。男性の場合は髪を整え、ひげをそります。女性の場合は白粉やほお紅、口紅を施します。
ご遺体は通夜・葬儀を行う場所に安置するのが通常で、多くの場合、葬儀社の式場の安置室や自宅に安置します。仏式の場合は、北枕(北枕が無理な場合は西枕でも良い)になるように布団を敷き遺体を寝かせ、手は胸の上で組んで手首に数珠をかけ、布団を掛けて安置します。地域や宗派により枕元に屏風を上下逆さにして置いたり、邪霊などからご遺体を守る意味で守り刀と呼ばれる小刀を置いたりと様々な風習があります。また枕飾りといってご遺体の枕元に白木の台を置き、その上に三具足(香炉・燭台・花立)を飾り香炉には線香、燭台には蝋燭、花立てには樒を一本ずつ立てます。宗派によってはその他に水、鈴、枕飯、枕団子などを飾る場合もあります。(浄土真宗の場合は飾りません。)
仏教ではご遺体の安置の後、僧侶に枕経をあげていただきます。これを枕づとめと言います。親族は僧侶の後ろで故人の冥福をお祈りします。この時の服装は、正式な喪服でなくてもよいので、派手な服装を避け黒やグレーの落ち着いた服装を着用しましょう。最近では通夜式での読経を枕経とする場合も多いようです。
仏教での通夜はお伽(おとぎ)煩夜(ばんや)夜伽(よとぎ)添い寝と言い、もともとは葬儀の前の晩にご遺体を邪霊から守るという意味合いで、親族がご遺体のそばで夜どうしお経を読むというものでした。現代では葬儀・告別式に参列できない方でも、通夜なら都合が付きやすいという理由で葬儀と同様、故人とお別れする場としてとらえられているようです。
通夜で弔問していただいた方をおもてなしする意味で、料理やお酒などを振る舞うことを通夜ぶるまいと言います。かつては精進料理でもてなしましたが、最近ではあまりこだわらず、肉や魚を用いた料理を用意するようです。また何かと忙しい昨今では、1、2時間で切り上げたり、代わりにお礼の品をお渡しすることが多いようです。
最近では、葬儀と告別式を同意語としてとらえることが多いのですが、本来は別の意味合いを持つものです。仏式の場合、葬儀は近親者のみで行われ、故人の極楽浄土への安らかな旅立ちとご冥福をお祈りする儀式です。一方、告別式は、友人や知人が故人とお別れをする儀式です。最近では、葬儀後引き続き告別式を行ったり、まとめて行ったりすることが多いようです。
葬儀・告別式の式次第は宗教、宗派、地域によって細かく異なる場合が多いのですが、ここでは基本的な流れをご紹介します。
【仏式の進行例】
参列者着席→開式の辞→僧侶入場→読経・引導→弔辞拝受→焼香→喪主挨拶→閉式の辞
【神式の進行例】
開式の辞→修跋の儀→献餞・奉幣→祝詞奏上→弔辞拝受・弔電紹介→玉串奉奠→撤餞・撤幣→神官退場→閉会の辞
【キリスト教式の進行例】
〈カトリックの場合〉
入堂式→言葉の典礼(聖書の朗読や説教)→感謝の典礼→赦祷式
〈プロテスタントの場合〉
賛美歌斉唱→聖書朗読→祈祷→故人の略歴紹介→弔辞→祝祷
告別式が終わるとご遺体を火葬場に送り出す出棺を行います。出棺の際には供花をご遺体のそばに飾って最後のお別れをします。このとき故人の思い出の品などをそばに置く場合もありますが、火葬後燃え残りそうなものは避けるようにします。その後、棺のふたを閉め、近親者や親しい友人など男性の手で、ご遺体の足が前になるようにして霊柩車に運びます。ご遺体を霊柩車にのせた後、列席者に喪主からお礼の挨拶をします。その際、近親者は位牌と遺影をそれぞれ持ってもらい喪主の横に並びます。
仏教の場合、火葬を終えてご遺骨を迎える際に、後祭壇と呼ばれる祭壇を用意し、ご遺骨を安置します。後祭壇にはご遺骨のほかに、遺影、位牌、香炉、燭台、鈴、花立てが置かれます。そして僧侶にお経をあげていただきます。これを還骨勤行といいます。最近では死亡した日を含む7日後の法要となる初七日法要を参列者の都合を考えて葬儀後に行うことが多いため、還骨勤行と初七日法要をあわせて行うことが増えています。
還骨勤行または初七日法要の後に、僧侶や世話役などお世話になった方の労をねぎらうために行う会食で、精進上げ、お斎(おとき)ともいいます。開会の前に喪主が代表してお礼の挨拶をします。僧侶が精進落としに参加できない場合は「御膳料」と「御車料」をお渡しします。